先日の京急本線踏切事故について

 皆さまも報道等でご存知の通り、去る9月5日の11時43分頃、京急本線神奈川新町駅付近の踏切で10tクラスのトラックと三崎口行きの快特が衝突する事故がありました。トラック運転手が亡くなり、列車の乗客乗員計33名が負傷しました。亡くなった方のご冥福をお祈りします…

 *尚、京急本線は9月7日13時頃運転再開しました。

 

1.現場付近の道路

  現場となった踏切周辺の様子を地図で確認すると、こんな感じです。

 当該トラックは仲木戸駅の方向からやってきて、第一京浜を目指したところ、件の踏切脇のT字路にたどり着いたと思われます。そこを左折してしまうと住宅街の中へ行ってしまい、右折すれば幹線国道たる第一京浜へ行けます。しかし、地図で一目見ただけでも大型車両の通行は厳しい場所です。巷では「(トラックが)東神奈川付近の高さ制限2.6mの地下道を避けたがために迷い込んだのでは」という話が聞かれます。確かに、ストリートビューや動画等で見てみると、まさに初見殺しの道だとわかります。報道で見た限りではパネルバン型のトラックのようでしたので、ダッシュボード等に「この車高さ○○m 幅○○m」という風にシール等を貼っておくこともある程度有効な対策なのかもしれません。もっとも、積載車や平荷台等、車高が積み荷に依存する車では効果はありませんが…

 

2.列車運転士側に責任ある?

 

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事故当該編成の同型車新1000形SUS車(Wikipediaより)

 一方、踏切事故の場合は鉄道会社側は過失無しという扱いが通例ですが、一部マスコミからは「特殊発光信号(以下特発)がおよそ30~40秒前から作動しており、十分に止まれたはず」という内容の指摘がなされています。確かに、作動時点で当該列車は踏切の約1㎞手前を走行しており、特発動作視認即非常ブレーキなら止まれます。

 しかし、神奈川新町駅には、退避線や上りホームへ出入りする列車のための信号機が多数存在します。それらの信号機は使用しない進路に対し当然ながら赤信号を表示します。つまり、林立する停止信号の中に特発が紛れ込む格好となったのではないでしょうか。また、120km/hで走行時は、一秒のうちに33m進みますから、一瞬の遅れが大きな差となることも当然考慮するべきでしょう。

 また、運転士達の「特発慣れ」も考えなければなりません。歩行者の直前横断による特発動作ですと、「一瞬動作してすぐ消灯」といったものとなります。しかも、それが頻繁に起これば、童話「羊飼いと狼」のように特発を見てもすぐブレーキを掛けない習慣がついてしまう危険性があります。

参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=DnzrmzSr3FA&list=PLfWkLA8fYjHsT87Ckga2Vzb9cRKvTJcAt&index=3

上記動画のように、八ツ山橋付近の踏切では直前横断がしばしば発生しており、運転士が「特発慣れ」する可能性があるといえます。(この踏切は立体化予定です)

 結局、遮断時間が長い、もしくは交通量の多い踏切の立体化が抜本的解決策と言えそうです。連続立体化に拘泥せず、単独立体化も視野に入れるべきでしょう。

 また、既存の立体交差についても、今回トラックを狭い道へと追いやった地下道のような高さが低いものは、路面掘り下げ等の改良が必須でしょう。

 

参考:

東京新聞(Web版)https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201909/CK2019090802000145.html

東京都建設局 連続立体交差事ポータルサイトhttp://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/jigyo/road/kensetsu/gaiyo/renritsu23.html